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【予告】日本画家 佐々木 真士の作品とエッセイ 紹介 ③

2020.10.05
皆様、こんにちは。
ヒカルです。
猛暑だった今年の夏から季節は移り、すっかり秋めいてきましたね。

中秋の名月、涼しげな虫の音、黄金色の稲穂と真っ赤な彼岸花のコントラストが美しい田畑・・・・
豊穣の季節、毎日の暮らしの中に小さなアートを感じますね。

さて
日本画家 佐々木真二先生のエッセイもシリーズ三回目。
今回も素敵な先生の作品とエッセイをお届けします。
お楽しみください。



ヴィンダヤーチャル
佐々木真士

ヴィンダヤーチャルは、ベナレスから西に75キロ程行ったところにある田舎町である。インドで買った地図に地名は載っているが、日本のガイドブックでは紹介されていない。ガンジス河の聖地を巡るという旅の目的から、予備知識のないままこのガンジス河中流域の地を訪れてみることにした。

 町に着いて宿に荷物を置くと、まずガンジス河が見たいと思った。町には中心となる道が一本だけあり、その道沿いに建物が並んでいる。そこから少し高台にある寺へと続く参道には、花や椰子の実などの供物や土産物を売る店が軒を連ねていた。店の多さやその賑わいから、その先にあるガンジス河への期待が少しずつ膨らんでいった。

 寺の入口に着くと、異様な臭いが漂っていた。お参りに使う牛乳やバターが発酵しているのかもしれない。この寺の本堂はあまり外から見えないように建てられていたが、中に入ると多くの人で混み合っていた。これだけ参拝者がいるのだから、知る人ぞ知る聖地なのだろう。私もお参りを済ませると、寺の脇道を進んでいった。

 やがて階段道となり下りていくと、にぎやかな門前とは対照的に急に寂れた様子になっていった。本当にこの道で良いのだろうかと不安に思っているうちに、河の見える場所にたどり着いた。太陽の光を受けてガンジス河は銀色に輝き、その表面を黄みがかった深緑色の波がうごめいていた。ただ、ベナレスと比べると拍子抜けするほど何もない。一人用の展望台と点在する儀式用の傾いた小屋、それに何艘かの観光ボートが巡礼者を中洲に渡しているのが見えるだけだった。

 私は期待が外れ、しばらく呆然と彷徨っていた。しかし、せっかく訪れたのだからと思い直し、写生をする場所を探すことにした。砂地を歩いて行くと、竹と木と布で作られた小屋の一つに、赤い包みが置かれているのが目に留まった。着替えの服だろうか、それとも亡くなった子供の亡骸だろうか。無造作に置かれた包みの中身を色々と想像しながら、主が不在のその小屋を写生することにした。

 すると突然強い風が吹いて布がはだけ、中から黄色いマリーゴールドの花が現れた。内心の不安が外れ、少し安堵する。どこからともなく持ち主らしき青年がやって来て、その包みを持ち去っていった。この出来事に一瞬手が止まったものの、日没まで写生を続けて宿に戻った。

 翌日も写生を続けているうちに、いつしか私自身の心が変化していくのが分かった。ここにはベナレスのように華やかなものは一切ない。しかし、河に祈るために必要なものは、目の前に見えている簡素な小屋で充分だと思えた。今までは河の周囲にある宮殿のような建物群に感動していただけだったのかもしれない。観光地からは想像もできなかったガンジス河の風景がここにはあった。

 ヴィンダヤーチャルで今まで見過ごしていた個人のささやかな祈りの姿に向き合えたことは、自分の信仰に対する認識を深めてくれたと確信している

*掲載作品の題名は「ガンジス河畔」、サイズ8号Fです。


■略歴
1976年  広島県生まれ
1996年  第48回京展(京都市美術館) '05 '06
1999年  京都芸術短期大学研究生修了
2001年  個展(ギャラリーRAKU/京都)  '05 '08
2004年  NEXT展 招待出品(京都高島屋/砺波市美術館)
2008年  The NIHONGA(京都文化博物館 )~'10 ‘12~‘18
京都美術ビエンナーレ 朝日新聞社賞(京都文化博物館 )
2009年  Nihonga・京 (日本橋三越/東京、'11~'14JR大阪三越伊勢丹巡 ~'18
2010年  京都日本画新展(美術館「えき」KYOTO)'11
2012年  京都美術・工芸ビエンナーレ毎日新聞社賞  (京都文化博物館)
第5回東山魁夷記念日経日本画大賞展  (上野の森美術館/東京)
2013年 第2回Artist Group風(東京都美術館)’16 ‘17 ‘19
2014年 花信風―第2回Artist Group風小品展―(高島屋/東京、大阪、京都)‘17’18‘20
2016年 個展「大河のうた」(ギャラリー恵風/京都)
2017年 第35回京都府文化賞奨励賞
第4回続日本画新展(美術館「えき」KYOTO)
2019年 Seed山種美術館日本画アワード2019(山種美術館/東京)

 佐々木先生の作品&エッセイのシリーズ掲載、次回も是非ご覧ください♪
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大阪店6階西ゾーン 美術画廊
直通電話 06−6631−6382
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