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【予告】日本画家 佐々木 真士の作品とエッセイ 紹介 ④

2020.11.03
皆様、こんにちは。
ヒカルです。
紅葉の美しい季節。秋が深まって参りましたね。
日本画家 佐々木真士先生のシリーズエッセイも、はや四回目となりました。

季節の移ろいを愛で楽しむ芸術の秋。
佐々木先生の作品とエッセイをお楽しみください。



ガラムクテシュワル
佐々木真士

ガンジス河沿いにガラムクテシュワルという巡礼地がある。首都デリーから東に65㎞、ベナレスからは北に位置する町である。先に訪れていたビトゥールから直行するバスがないため、夜中に何度もバスを乗り継いだ。ようやく高架橋のたもとにあるこの町に降り立ったのは午前7時前だった。夜通しバスに揺られて疲れていたが、宿を決めると町を探索することにした。

 河岸にはテントや露店がひしめき合って立っていた。そして、その向こうには緑みがかった黄土色に濁ったガンジス河が流れていた。建物やガートはきれいに整備されていて、見たところ古い寺はないようだった。一方、ガート下の砂地の上には木や竹、網代などでできた儀式用の小屋が雑然と建てられていた。朝早い為か人の姿はまばらで、土産物屋や露店の店主らが準備をしていた。

 周辺を一通り写生し終えると、ガンジス河に架かる橋を渡ってみようと思った。車道の幅を広く取ってある橋だが、人が一人通れる歩道があった。橋を20分ほど歩くと対岸に着いた。高低差があるためか地面に下りる階段や道がすぐにはない。さらに行くと砂地が叢となり、眼下に小さな集落が見えてきた。取り残されたかのような小さな集落だったが、洗濯物が干されてあり人の住んでいるのが分かった。

 いくら行けども橋を下りることができないため、対岸に引き返すことにした。河の中ほどまで来たときに、足下に広がる河に目をやると、腰まで水に浸かった初老の痩せた男の姿が見えた。初めは漁師かと思ったが、どうも違う。その男は白いシャツに、白い腰布を褌のように股に巻き付け、手には長い竹の棒を持っていた。圧倒的な河の流れの中に、一人身を置くこの男は何をしているのだろうか。心惹かれてしばらく観察することにした。

 どうやら彼は竹の棒で河底を探りながら、歩いて河を渡ろうとしているようだった。この辺りは流れの速さや深さが所によって違うのだろう。夕闇の迫る中、牛歩のような遅い歩みだった。確かに舟を持たないものは、この男のように河を歩いて渡るしかない。男は日没までに岸に辿り着けるのだろうか、気になりながらもその場を後にした。

 宿に戻ってからも男の姿が忘れられなかった。なぜ歩いて河を渡っていたのか、それはこの男にとっての日常の行いなのだろうか。どんな気持ちで濁流に抗って、自らの歩みを進めていたのだろう。他人には伝えられない、本人にしか分からないことがあることを象徴しているかのような姿だった。私には、男の姿は頼りないようでいて確固としたものに見えた。

 その夜、ふと目が覚めて宿のベランダに出てみた。外の空気は冷たく、昼間の喧騒と陽気は失われていた。月光に照らされたガンジス河が、青白く静かに目の前を流れていた。人気の絶えた夜の闇を見つめながら、私が知ることのないこの河を巡る様々な物語があることにしばらくの間思いをはせた。

 *掲載作品の題名は「 月光」、サイズはWSM です。


■略歴
1976年  広島県生まれ 
1996年  第48回京展(京都市美術館) '05 '06 
1999年  京都芸術短期大学研究生修了 
2001年  個展(ギャラリーRAKU/京都)  '05 '08 
2004年  NEXT展 招待出品(京都高島屋/砺波市美術館) 
2008年  The NIHONGA(京都文化博物館 )~'10 ‘12~‘18
京都美術ビエンナーレ 朝日新聞社賞(京都文化博物館 ) 
2009年  Nihonga・京 (日本橋三越/東京、'11~'14JR大阪三越伊勢丹巡 ~'18 
2010年  京都日本画新展(美術館「えき」KYOTO)'11 
2012年  京都美術・工芸ビエンナーレ毎日新聞社賞  (京都文化博物館) 
第5回東山魁夷記念日経日本画大賞展  (上野の森美術館/東京) 
2013年 第2回Artist Group風(東京都美術館)’16 ‘17 ‘19
2014年 花信風―第2回Artist Group風小品展―(高島屋/東京、大阪、京都)‘17’18‘20
2016年 個展「大河のうた」(ギャラリー恵風/京都) 
2017年 第35回京都府文化賞奨励賞 
第4回続日本画新展(美術館「えき」KYOTO) 
2019年 Seed山種美術館日本画アワード2019(山種美術館/東京) 

 佐々木先生の作品&エッセイのシリーズ掲載、次回も是非ご覧ください♪
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大阪店6階西ゾーン 美術画廊
直通電話 06−6631−6382
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